Slow Waltz of the night sparkling


灼熱のコード  しゃくねつのこーど 
融解のピアス ゆうかいのぴあす 
不幸になれるお呪い ふこうになれるおまじない 
夜明けと夕暮れの間 よあけとゆうぐれのあいだ 
その唇に封をして そのくちびるにふうをして 


仮縫いの娘 かりぬいのむすめ 
成り代わる名 なりかわるな 
郵送する季節 ゆうそうするきせつ 
罫線の消える世界 けいせんのきえるせかい 
触れるより強く ふれるよりつよく 


淫らの国 みだらのくに 
陰鬱な行事 いんうつなぎょうじ 
夜な夜な即興戯曲 よなよなそっきょうぎきょく 
世迷言 よまいごと 
熟れた肌 うれたはだ 


孤高の墓と生き死人 ここうのはかといきしびと 
虚無の空想行列 きょむのくうそうぎょうれつ 
午前の死者 ごぜんのししゃ 
モーニングヴェールから見る世界 もーにんぐヴぇーるからみるせかい 
夢の棺 ゆめのひつぎ 


ノルディックの手 のるでぃっくのて 
熱い真夜中の為のワルツ あついまよなかのためのわるつ 
錆びる身体、朽ちる脳髄 さびるからだ、くちるのうずい 
クラシック・ロリータの瞬き くらしっく・ろりーたのまたたき 
透明合成樹脂のような恋 とうめいごうせいじゅしのようなこい 


耳の付け根に眠る歴史 みみのつけねにねむるれきし 
目蓋の裏で醒める情愛 まぶたのうらでさめるじょうあい 
贅沢な指の筵 ぜいたくなゆびのむしろ 
甘美に踊る黒の瞳 かんびにおどるくろのひとみ 
砂糖菓子の腕 さとうがしのうで 


償いの小唄 つぐないのこうた 
弔いのスローダンス とむらいのすろーだんす 
我が身を葬るまで わがみをほうむるまで 
始まりも終わりも簡単ならば はじまりもおわりもかんたんならば 
残虐なる続きへ ざんぎゃくなるつづきへ 


君と無感動な音列 きみとむかんどうなおんれつ 
新有害甘味料 しんゆうがいかんみりょう 
さらばヒュッテンシュタイン さらばひゅってんしゅたいん
暗い種実 くらいしゅじつ 
忘れ遂せる故の齢 わすれおおせるこのよわい 


茘枝の終った世界 れいしのおわったせかい 
木通の壊した退廃世界 あけびのこわいしたたいはいせかい 
柘榴の滲んだ紅い宝石 ざくろのにじんだあかいほうせき 
締め上げる黒のビスチェ しめあげるくろのびすちぇ 
愛玩島にて あいがんじまにて 


あるがままを射て あるがままをいて 
新しい二本の足で あたらしいにほんのあしで 
倒錯する自己愛 とうさくするじこあい 
玲瓏なる脳に君を入れて れいろうなるのうにきみをいれて 
指先から乖離する意識 ゆびさきからかいりするいしき 


主に告げ口を しゅにつげぐちを 
楽園喪失の調べ らくえんそうしつのしらべ 
移民のことば いみんのことば 
夏の伽藍と夜の月 なつのがらんとよるのつき 
優良な霞みの梢 ゆうりょうなかすみのこずえ 


白い茄子と新世界の指輪  しろいなすとしんせかいのゆびわ 
三つ打ち小屋のさざめく梟 みつうちごやのさざめくふくろう 
フライパンの底抜け ふらいぱんのそこぬけ 
宵に捧げる肥沃な大地 よいにささげるひよくなだいち 
再現の月 さいげんのつき 


◆補足

 モーニングヴェール・・・カトリックの故人の親族の女性がかぶるもの
 玲瓏・・・透き通り、曇りのないさま
 乖離・・・そむきはなれること、結びつきがはなれること
 伽藍・・・僧が集まり住んで、仏道を修行する、清浄閑静な場所
 筵・・・風流な会合などの席