遠い遠い国


遠い遠い国の、

知らない場所で、

あなたは静かに息をしている。


遠い遠い知らない国で、

あなたは太陽の光を浴びて、

今日食べる朝ごはんのメニューを考えている。


あなたが考えごとをするときの

少しツンとした横顔をわたしは知っている。


遠い遠い国の、知らない場所で、

同じようにツンとした横顔で、

朝ごはんを考えているあなたのことを考える。


あなたは知らない場所で、わたしの頭の中にいる。

あるいは想像の中に。


決して声は届かないし、想いも伝わらない。

あなたに とってわたしは居ないのと同じだろう。


でもわたしは違う。


わたしの目や、頭や、心や、てのひら、

あらゆるところにあなたがあるのを感じている。


遠い遠い、 わたしの想像もつかないような驚くべき場所で、

あなたがいつものように歩いているのを考えると、

あなたはいつでもわたしの傍にいてくれる。


決して話しかけないし、話しかけられもしない。


それでも遠い遠い国で、

あなたは静かに息をしている。


そのことを想像するだけで、

わたしは十分幸せであると思うのだ。