Again the second Virgin


約束の場所で、今 やくそくのばしょで、いま 
生存を超える意思 せいぞんをこえるいし 
欺瞞を排せよ ぎまんをはいせよ 
寝息の安らかなことを ねいきのやすらかなことを 
夜の森のフェルマータ よるのもりのふぇるまーた 


空想虚言癖 くうそうきょげんへき 
半分の調律の音階 はんぶんのちょうりつのおんかい 
新しい社交技術 あたらしいしゃこうぎじゅつ 
楽しい社会生活 たのしいしゃかいせいかつ 
卑しき文明 いやしきぶんめい 


冷たい海に抱かれて つめたいうみにだかれて 
イグニス・ファトゥス・オーケストラ いぐにす・ふぁとぅす・おーけすとら 
行き遅れのララとロロ いきおくれのららとろろ 
さよならの部屋でさよならを さよならのへやでさよならを 
等しく糧となれ ひとしくかてとなれ 


熱い夜のこと  あついよるのこと 
費えた命のこと ついえたいのちのこと 
指切りのこと ゆびきりのこと 
尚も生まれ出る骸 なおもうまれでるむくろ 
尚も破壊されゆく証 なおもはかいされゆくあかし 


蟷螂メリーと冬の雨 かまきりめりーとふゆのあめ 
陽炎リリィと夏の夢 かげろうりりぃとなつのゆめ 
アカシアの三重奏 あかしあのさんじゅうそう 
虚構の病棟 きょこうのびょうとう 
知覚される死とは何か ちかくされるしとはなにか 


本日は別れ話にて ほんじつはわかればなしにて 
あなたのいない海 あなたのいないうみ 
清純無垢な私を喰らって せいじゅんむくなわたしをくらって 
どちらが夢よ どちらがゆめよ 
ひとりぼっちの彼は言いました ひとりぼっちのかれはいいました 


スーネルリーネの森の奥 すーねるりーねのもりのおく 
死人を屠る夢 しびとをほふるゆめ 
少年少女の夢のぬけがら しょうねんしょうじょのゆめの抜けがら 
君と生きる苦しみを きみといきるくるしみを 
文明の中で笑い続ける彼女は ぶんめいのなかでわらいつづけるかのじょは 


夢見るように理不尽に ゆめみるようにりふじんに 
カルミアのくちづけ かるみあのくちづけ 
嘆きの歌声 なげきのうたごえ 
死者の見た世界 ししゃのみたせかい 
柔らかな白い箱 やわらかなしろいはこ 


悲しみとは言えない死を かなしみとはいえないしを 
喜びとは言えない生を よろこびとはいえないせいを 
夏の眠る頃に なつのねむるころに 
焼べて還すは不知火の夢 くべてかえすはしらぬいのゆめ 
忘れてお眠り わすれておねむり 


◆補足

 フェルマータ … 音符や休符の記譜上の定量時間が延長されることや、またそれを指示した音楽記号。
 半分の調律 … 平均律において半音より狭い音程があり、微分音などと呼ぶ。
 イグニス・ファトゥス … 愚者火。青白い光を放ち浮遊する球体、あるいは火の玉。
 ララとロロ … ロロ・キドルまたはララ・キドゥル。インドネシアの民話に出てくる女神。